◎ご飯を炊いて、お櫃に移す。炊飯器が普及してからほとんど行われなくなった習慣が、おいしいもの好きの人々の間で見直されつつあります。炊きたてのご飯から余分な蒸気を吸収し、自然な状態で、おいしく食べられる時間を保つのが、お櫃の役割。頼れる無垢材の道具です。
◎桶に蓋を乗せたシンプルな構造は、関西型と呼ばれる形。中にちょうど3合のご飯が入ります。素材は国産、無塗装の椹〈さわら〉。ヒノキ科の針葉 樹ですが強い香りがなく、食品に匂いを移しません。
◎一点一点が、今や貴重な桶職人による手作りです。桶を締める竹製の箍〈たが〉の美しさや、竹釘で固定した堅牢な作りなど、その技の確かさがうかがえます。
◎職人の手の痕跡が見える部分を二箇所ご紹介しましょう。ひとつめは、桶の脚部の「足付〈あしつけ〉」と呼ばれる部分。地面から少し浮いている部分は、職人が銑〈せん〉で直接削り出しています。
◎もうひとつは、桶の縁の部分。木の繊維がむき出しになるはずの部分が、よく見ると鈍く光っています。これは、欅製の棒を当てて何度も擦り、木の目を潰した結果。木肌に含まれる油を滲みださせることによって、水分の吸収を妨ぎ、木口の変色・腐食を防ぐ効果 があります。
◎繰り返し使うと、より風合いのいい道具になります。毎回、使用後にはぬるま湯でよく洗い、直射日光を避けて、風通しのよいところで乾燥させてください。
*寸法、容量、重量の数値は個体差があります。