色々な人が東屋のモノを使っている現場の記録。
親父がはじめた渋谷・並木橋の「有昌」に入ったのは、19歳の頃。当時、店の人が急に辞めてしまってね。自分は洋服のスタイリストになりたくて、念願の仕事が決まったタイミングだった。朝は洋服屋に出勤して、早引けして夜から家の仕事。そんな「二足の草鞋」を3年位続けたかな。昔気質の親父は勿論つくり方なんか教えてくれなくて、最初は鍋や皿洗いばかり。洗う前に鍋の残りをよけておいて、味見したりして覚えた。やがて深夜営業の時間を任されて、親父も亡くなって、それなりに自信はついたけど、まだどこかで「家の仕事だからやってるんだ、好きでやってるんじゃない」なんて思ってました。自分にはこの仕事しかないと気づいたのは、もしかしたら2013年に一度店を失った後かもしれないね。
店をなくしてからは色々な料理の現場を経験して、和食洋食の年配の親方から色々なことを教えてもらった。盛り付けも、西洋料理は絶対に皿の縁にかからないように盛るでしょう?「白吉」も小ぶりなオムライスを真ん中にのせたら可愛いな、なんて発想がわくよね。丸皿に盛り合わせるとビュッフェの取り皿っぽいけど、オーバル皿だといい感じのワンプレート料理になる。だから今日はまかないをワンプレート風に、縁まではみ出さんばかりにどんっ! と盛ってみました。
そういえば親父が「有昌」で中華粥を出しはじめたのは、中華街のあの店に出かけた後のことだったな、なんて今にして気づくんですよ。子どもの頃、休日に家族で外食するのも必ず中華料理。親父が「この白菜の切り口見てみろ」なんて言うのを聞きながら食べるのが嫌で仕方なかった。それなのに不思議だね、今、親父と全く同じことしてる。出かけた先で面白い料理に出会ったら、家やまかないで試してみたりして。今のまかないは、店でつくる料理だけだと偏りがちだから、パートナーがつくって持ってくる副菜を必ず添える。彩りも良いし南瓜もひじきも身体に良さそうでしょ。気持ちは漲っていても、もう50代半ばだから健康にも気をつけないと。
昨年9月に代官山で再スタートを切って、1年が経ちました。親父の代から通ってくれてる90代のお客さんもいるし、この1年で常連になったお客さんもいる。これがうちの今の料理です、と胸張って出す気持ちで、でもどこか「有昌」というものを壊さない料理で、これからも長く続けていきたいよね。
深さがあるのでご飯もおかずもたっぷり盛ることができる。
リムは敢えて無視して、縁ギリギリまで。
「鶏肉で青椒肉絲にするとさっぱりして美味しいから、
店のメニューにしようかな」
鶏肉の青椒肉絲
〈材料〉2人分
鶏むね肉…250g、ピーマン …3個、タケノコ水煮…200gくらい、セロリ…1/2本、ニンニク…1片、塩…適量、白胡椒…適量、鶏ガラスープの素…少々、オリーブオイル…適量、ごま油…少々
〈作り方〉
①鶏むね肉はそぎ切りから細切りにする。ピーマン、タケノコ、セロリは千切り、タケノコは水をきっておく。ニンニクは薄切りにする。 ②中華鍋にオリーブオイルを熱し、鶏肉に火を通す。 ③②にニンニクを入れて香りを出す。 ④ピーマン、タケノコ、セロリを入れて炒める。 ⑤塩、白胡椒、鶏ガラスープの素で調味する。 ⑥ごま油を軽く振って香りづけして出来上がり。
Profile
「有昌 Astage」店主。父が渋谷・並木橋で営んでいた「有昌」に19歳で入り、料理の道へ。2013年に「有昌」は惜しまれつつも42年の歴史に幕を閉じる。それから10年後の2023年、代官山に新たな店舗を開店。
住所:東京都渋谷区代官山町7-5
ル・キューブ代官山2F
営業時間:火~土曜 11:30~14:00、17:30~22:00
(火曜はランチ営業のみ)
定休日:日曜、月曜
Instagram:
https://www.instagram.com/yushokazuo.sbynkb/
日付=2024・10・9
写真=馬場わかな
文=成合明子
編集=落合真林子