◎天然の素材を使う。たとえ廃材でも、まだ使えるものは積極的に再利用する。そんな材料と考え方から生まれた、小さな道具が「薬味寄せ」です。
◎読んで字のごとく、擂鉢でごまなどを擂ったあと、おろし金で山葵や生姜をおろしたあと、表面に残ったものを掻き寄せるための道具です。細い先端が、細かな溝にフィットし、残った素材を無駄なく掻き寄せます。
◎原料は淡竹〈はちく〉。さらにいうと、これは、茶道具である茶筅〈ちゃせん〉を作る際、製品にならなかった品を材料にして製作しています。
◎茶筅は、固い竹を割り、味削りと呼ばれる工程を経て、菊の花のような繊細な先端に仕上げますが、それが1本でも折れると、出荷ができません。製造中のロスの多い品です。その、出荷できない茶筅を割って、先を切りそろえたものが、薬味寄せなのです。
◎よく見ると、どの部分を使用したか想像がつくでしょう。わずか8センチほどの長さですが、先端の細さといい、しなりの具合といい、強度といい、なかなかに役立つ品であることは、使えば実感していただけると思います。
◎天然素材で作られた製品ですので、くたびれたのちは、埋めると土に戻ります。そのままでは役に立たないはずのものが、活用によって、誰かの、かけがえのない存在になる。何となく、生き方のお手本にもなりそうです。
*寸法、容量、重量の数値は、個体差があります。