◎飯と汁と菜ふたつ。一回の食事に、必要十分な量です。それを盛り付けられ、すっきりと重ねて収納できる組椀を作りました。禅宗の修行僧は、日々の食事に応量器と呼ばれる組の椀を用いますが、その様式に近い「四ツ椀」です。
◎一番下の大きな「一ノ椀」が、飯碗。その次の「二ノ椀」が汁椀。以下に惣菜用の「三ノ椀」、香の物用の「四ノ椀」と続きます。飯碗が大きいのは、かつてご飯が粥であった時代の名残です。
◎能登産の欅〈けやき〉を使い、能登・輪島で製作。木地にはまず、口縁〈こうへん〉や高台に補強のための布を貼り付ける「布着せ」を行います。次に、木の導管を漆で潰してから、いよいよ塗りにかかります。
◎四つの椀それぞれには、下地に始まり、仕上げの上塗まで、全部で九度の塗りが重ねられています。下地の段階で用いられているのが、綿を布で包んだタンポと呼ばれる道具で漆を叩きつけていく「叩き塗り」の手法。刷毛で漆を塗るのとはまた異なる、マットな質感が生まれます。写真の黒のほか、木地の風合いが浮かぶ「透〈すき〉」、気品のある伝統的赤色の「朱〈あか〉」もご用意しました。
◎洗って拭き、重ねると、四つの椀がぴったり一ノ椀に収まる。必要十分の意味を、視覚からも実感します。食事のたびに居住まいを正したくなる、清々しい組椀。独立してひとり暮らしを始める方に、ぜひお勧めしたい道具です。
*寸法、容量、重量の数値は、個体差があります。
*容量は、満水時の数値です。